ギャラリー萩

石川県加賀市 「ギャラリー萩」のホームページです。

今年も東北の作家たち展、5年目です。

あれから5年、彼らの日々
東北の作家たち展Ⅴ

2015年8月1日(土)~9月2日(水) 山代温泉九谷焼体験工房COCO
2015年9月4日(金)~13日(日) 大聖寺町ギャラリー萩
2015年9月15日(火)~30日(日) 柴山町ホテルアローレ

 

未曾有の津波が海岸線を襲った東北の大震災から5年、いつの間にか私たちの記憶は薄れましたが今なおその地に生きる作家たちの日々はどうなっているのでしょう。
5年目の今を生きる彼らの日々をフォトエッセイのように辿りながら、渾身の新作と共に紹介します。 山代、大聖寺、柴山と加賀市内の3か所で時期をずらしての開催です。
どちらかの会場に足をお運びください。

ガラス作家菊田佳代さんの住む宮城県気仙沼市の海の写真です。こんな穏やかな日が戻ってきているのですね。震災からの復興の支援をと始めた東北の作家たち展でしたが、記憶の風化と共に訪ねてくる人の数も少なくなって、果たしてこの企画の意義はあるのかと悩みの中にありました。

そんな時に仙台から送られてきたメッセージです。この企画に初めからかかわってたくさんの作家たちを紹介してくれた私の従弟、仙台で杜の未来舎というギャラリーを主宰している齋藤久夫さんからです。静かに力が湧いてきました。檄文をお願いね、と依頼して書いてもらったのでしたが、私は心を揺さぶられ、今年もやってみると強く思ったのでした。少なくとも何かしらの意義のある仕事だった、企画だったと思えたからでした。作家たちの内面に関わる部分で、お役にたてたかもと思えたからでした。私を含めたいていの人は、このようにいつも自己の存在意義を確認しながらでないと、歩けないもののようです。彼は震災後「東北炎の作家支援プロジェクト」の中心メンバーとして、たゆまず歩み続けています。加賀にも何度か訪ねてくれています。そのメッセージを・・・。

東北の作家たち展Ⅴ に寄せて 仙台市杜の未来舎 斉藤久夫

か つてリアス式海岸沿いの狭い土地に張り付くように密集していた街はほとんど消滅してしまい、家並みに隠れていた海が間近に迫って見える。地元に住む人々に は一変した有様も、初めてこの地を訪れた人の目には前からこうであったように映ずるはずだ。復興が元の姿に戻すことなら、もはやそれは不可能であろう、と 誰もが思っている。この現実の中で前へと歩み続けなければならない。

震災から5 年、そんな東北に生きる工芸家たちを、加賀の方々が引き続き招いてくださっている。あの震災の何年かは、東北の作家たちも、加賀を訪れ、この地の多くの 人々から特段のおもてなしを受けた。もはや地元では物が売れない、それだけでなく果たしてここで物づくりが続けられるのかどうか、気力も萎えかかっていた 作家たちに、工芸王国からのこの招きがどれだけ励みになったか。感謝の思いを今、新たにする。

震災前、加賀は、多くの東北の作家たちには地理的にだけではなく遥か遠くの存在だった。九谷焼であまりにも有名な彼の地で、東北の作家のひとりとして遇されることは、プロの工芸家としてのあり方をときに厳しく問われるきっかけにもなったと思う。

むしろ地方地方に残された特徴的なローカリティーを大事にすることが、グローバルに羽ばたくことにつながる時代でもある。評価の基準が中央のトレンドに左右されがちな中で、この直接の結びつきが、別な尺度で創作に取り組む道につながってほしいと思う。

工芸家たち の生活は相変わらず苦しい。教室の収益に頼らざるえない現状がある。それどころかアルバイトに追われ作品づくりに戻れていない者もまだいる。しかし、一方 で、ふるさとの山があり、川があり、海が見える。この風土でなければできないものがあると信じて作り続け、新しい取り組みをしようとしている作家たちがい る。その成長をお見せできる展示になればと願っている。

Scroll Up