ギャラリー萩

石川県加賀市 「ギャラリー萩」のホームページです。

「一点 一点」

いつもより春が早かった今年ですが、それだけに花の終わりは早く小さな我が家の庭はサクランボやジューンベリーなどの青い実が付き始め孫たちの喜ぶ声が響いています。

夫の介護という思いがけない出来事でお休み中のギャラリー萩ですがそんな中で一つのプロジェクトが進んでおりました。息子夫婦、実際には嫁の美波さんが主役ですが自然食のお店を開くことになりました。我が家に同居を始めたころからその話はあったのですが、小さな子供を育てながら親の会社の手伝いも本格的で、この夏の初めには3番目の子も生まれるという状況で一体いつ開くのか見当がつかずにおりました。それでもギャラリー周りの整備はコツコツと進み駐車場も整備されました。ギャラリーの1階部分は少しずつ改装の手が入り扱う商品などの準備も進んでいる様子でした。

「今週の木曜日にオープンするよ」と知らされ驚きましたが、土日は休みオープン時間帯も短く、無理はしない店づくりをするのだと聞かされていましたのでさほどの心配はしません。

もとより私も雪に埋もれる冬や熱中症の恐れのある夏には長いお休みを頂き、春と秋、気持ちのいい季節だけいくつかの企画展を開いてきただけでした。いいご縁が結ばれた作家さんを大事に、欲張らずできることを精一杯にをモットーにささやかですが20年も続けてくることができました。

何が財産かと言えば、このギャラリーの建物そのものです。今はなくなってしまった山中温泉の奥にあった九谷村に建っていた夫の父が立てた土蔵を移築したものです。義父自らが山を歩き二十年近くの年月をかけ集めた栗材をメインにした空間は何とも穏やかで素敵です。訪れて下さる誰もが安らいでくださいました。焼き物も、木のものも、油絵も版画も、小さなアクセサリーまでも何でも受け入れて、見終わった後のコーヒータイムの楽しかったこと。この建物こそ主役でした。

だからこそ、「このギャラリーを使わせてほしい」との申し入れは有難いことと受け止めたのです。使われないことの方が寂しいのです。今この空間で出来ることがありそれを目当てに訪ねてくれる方がいればそれが私たちの(この建物の)喜びでもあるからです。床板やカウンターが新しくなり、最新のレジが乗り、おしゃれな棚が出来上がってきました。仲良しの茶房古九谷の章子さんの素敵なロゴもいただいて《一点 一点》がオープンします。美波さんに赤ちゃんが生まれたら少しお休みを頂き、たぶんいろんなめどが付いたら秋のいつごろかにはまた開くことでしょう。赤ちゃんを負ぶいながらになるのかどうか、典型的育メンである息子も多分深くかかわるつもりのようです。

ただまだギャラリー萩は消しません。まだ大事なことをやり終えていないからです。静かに過ぎた日々を振り返りながらひとつの企画を温めています。「ものがものがたるものがたり(仮題)」展。これはギャラリー空間として残っている2階のスペースを使って、こじんまりとやりましょう。

帰りには《一点 一点》にも寄っていただいて。

いつの日になるか私にもわかりませんが、これもご縁があったらでしょう。それまでギャラリー萩は静かに息をし続けます。

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