ギャラリー萩

石川県加賀市 「ギャラリー萩」のホームページです。

九谷焼と金魚―東京の夏

猛暑の日が続きます。風邪が治らず少々辛い東京出張でしたが、お楽しみはいっぱい。いつものように、白山に見送られ富士山に出迎えてもらい、雲が多かった割には肉眼では、ちゃんと山の形が見えました。写真は、相変わらずの腕とカメラなので、お許しを・・・。

白山と富士山、日本を守る三霊山の二つです。姿が見えると嬉しくてついついパチリ、幸先よしのしるし。

今年は九谷焼開窯360年の節目の年です。東京駅のステーションギャラリーでは、江戸時代参勤交代のルートを走る北陸新幹線の開業と合わせて記念展「交流するやきもの 九谷焼の系譜と展開」が開催中です。私はせっかくなので石川県九谷焼美術館友の会会報誌「ふかむらさき」の取材を兼ねてやってきました。現場レポートのような感じで、自分の体感も含めご来場者の様子などをと。

丸の内北口を出るとすぐ右手にステーションギャラリーがあります。東京駅丸の内駅舎が、辰野金吾の設計によって創建されたのは、1914(大正3)年のことです。重要文化財でもある東京駅舎の一部が美術館になっています。

100年煉瓦が展示室の壁です。重厚ないい雰囲気の空間に、九谷五彩に倣ったパネルがコンセプトを伝えてくれ、展示台をも彩ってくれています。360年の歴史を持つ九谷焼も明るくモダンなステージに乗っています。でもなぜかとても懐かしい友人に会ったような思いがしました。それはそうです、近づいて見ると見覚えのある器たち。石川県九谷焼美術館蔵がいっぱい、お馴染みのお宝でした。小松市博物館蔵、能美市九谷焼資料館蔵のものもあり、皆私と一緒、出張してきているのでした。入館者はみな熱心に覗き込んでいます。緻密な細工が施され、その上絵も繊細緻密なものが多く、驚きと感動を持って見ているのが分かります。『どう、凄いでしょう』と自慢したい気持ちで一杯でした。

歩き疲れたころ、明治期のジャパンクタニの再現プロジェクトの模様を記録したビデオが放映されていましたので、一休み。かってこんな大きいものがどんどん作られヨーロッパやアメリカに輸出されていたのですね。持てる技術の限りを尽くした生地に、赤1色で流行のジャパネスク文様を緻密に描き出し、金を蒔いて華やかに。すごいいエネルギーです。今産地にこれだけの迫力があるかどうか、長い歴史の上でちょっと一休みでもないかもしれません。360年記念展の意義って、こういうところにあったのでしょうか。時間的にも空間的にも自分をはるかに超えた所に向かって行くエネルギー、やってみようじゃないか、の意気が伝わってきます。現代のハイテクと100年煉瓦の収まりもグッドで、九谷焼の存在もとても強く印象付けられた展示でした。

人気のミュージアムショップです。ここも煉瓦とアクリルや鉄無垢の木が素適にコラボレートされていて、人気の鉄道グッズがたくさんあります。入り口を入ってすぐ、孫たちが着ているトーマスとパーシーのTシャツがディスプレイされていました。彼らのお気に入り、ojicoのシャツです。旧知の誰かにあったような懐かしさ、Tシャツというものでしかないのですが、ものを越えてしまっています。孫たちへのお土産に、電車のヘッドマークがデザインされたTRAINIARTオリジナルマスキングテープを買いました。線路がプリントされているガムテープもありましたが、家じゅうべたべたと貼られたイメージが浮かんできてやめました。が、買ってくれば良かったと、悔やんでいます。ここは美術館入場者しか入れないショップなので、次の機会は果たしていつになるのか・・・。

さてコレド室町で開かれているアートアクアリウムです。地下鉄三越前を降りると既に行列です。同行のNさんが、まずは日本橋らしいお食事をしてからにしましょうと、地上に出てお蕎麦屋さんに入りました。日本橋は大体どのお店に入っても外れはないのよの言葉通り、江戸好みの更科蕎麦、大層美味でした。行列は短くなっていて、それから30分程で会場入りでしたが、ラッシュアワーのような大混雑でした。

金魚は本来自然界には存在しないもの、観賞用にと人間が作り出した生き物です。アートと言えば言える、生きた金魚というアートを、アートとして観賞するための水槽や照明などの仕掛けを作り出し、5年前に企画されたもの。毎年人気が上がり、連日大盛況です。アクリル水槽の仕掛け、凸凹レンズの仕掛けがあって、金魚の顔が大きくなったり、万華鏡のように複雑な動きになったりと、金魚そのものの美しさ優美さを愛でるというより、仕掛けで驚かされました。琳派の屏風も、金魚の動きとCGをリンクさせながらのミニ紙芝居のようなものだったかも。金魚という生き物が死なずに、しかも食べたり出したりで汚れてしまう水をきれいに保ち、これだけのパフォーマンスを仕掛けている人たちのエネルギーって凄いものです。舞台裏の人たちに会いたいと思いました。真夜中の仕事、きっとたくさんこなしているプロ集団がいるのです。闇の中でたくさんの人々に身を晒しながら、何万匹の金魚が日本橋の真ん中のビルの中で生きている、そのこと自体が凄い奇跡、アートと呼ぶのかどうか。東京って、たまに来てみると驚くこと一杯です。

もう一つの金魚!!これは津軽の金魚ねぶた。新宿伊勢丹での催事「日本の子どもたちへ」

今回の出張のメインはこれでした。加賀の若い九谷焼作家と山中挽物轆轤師のものを出展しています。久しぶりの新宿伊勢丹、数年掛りだった内装リニューアルも終わり、さすが日本一の集客を誇る新宿伊勢丹という風格です。ここに出ると気持ちが高揚します。私は考えられないミスをしてしまったのですが、伊勢丹、星野リゾート、sesame さんの若いスタッフの方々に助けられ、何とかなりました・・・。ご迷惑をかけました。お詫びと感謝です。


加賀に戻ってきたら、玄関前のメロン(瓜)が大きくなっていました。孫たちのために植えたもの、こんなに細い茎で垂れ下がっている実、いつまで持つかしら。ほっておいても大きくなったメロン、ご苦労様。甘くな~れ。

まだまだ続くか、猛暑の夏。皆様も負けずに、秋を待ちましょう。

9月4日(金)からギャラリー萩で「東北の作家たち展Ⅴ」が始まります。どうぞお訪ね下さい。コーヒーを飲みながらいろんなお話いたしましょう。お待ちしています。

 


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