ギャラリー萩

石川県加賀市 「ギャラリー萩」のホームページです。

この秋のこと

ギャラリー萩のブログをご覧くださっている方に。
8月に入ったのに、どうして更新がないのかしらと、訝っておられるかもしれませんね。
気にはなっているのですが申し訳ありませんでした。
理由はきわめて個人的なことで、大阪にいる次女の出産の予定日が10日ほど早まったことでした。
早まるかもと準備してはいたつもりでしたが、慌てました。
大阪には次女夫婦と2歳の孫が暮らしていますが、今回は里帰り出産ではなく、母子同室、家族も宿泊可能な新時代対応の産院での出産を選択した次女夫婦です。
安産で、母子ともに順調な回復で一安心でしたが、猛暑の中での子育てはことのほか大変です。
エアコンを調節しながらの温度管理と水分補給、大阪のマンションの中で奮闘中です。

仕事の続きは,娘夫婦のPCを使ってのメールと、携帯で何とかこなしています。15年前ギャラリーを始めた当初はこんなことができるなんて夢にも思わなかったものです。世界中どこにいてもPCさえ使えれば(ipad,iphoneなどもっと便利なツールを若い人たちは使いこなしているようですが)最低限の仕事はできる時代ですね。
さて、私が関わっているこの秋の行事案内をいたします。

新宿伊勢丹の5階のリビングの一角に和食器プロモーション(今はグローバルダイニングと名前を変えたようです)という、週替わりの企画展をする場所があります。以前そこで企画展を任されたことがあるのですが担当のバイヤーさんからこの春依頼を受けました。「プレイバロック」という伊勢丹の今季のテーマに沿っ手、九谷焼をメインに面白い企画を立ち上げて欲しいとのこと。バイヤーのSさんはバロックというイメージが、九谷焼の派手やかな加飾に結び付いたのだといいます。そうして進めてきたのが「KUTANI de BAROCK」でした。古九谷が生まれた1650年ごろは確かにヨーロッパではバロック様式の建築や美術が全盛期を迎えようとしていた時代です。九谷焼の持つ華やかで過剰な装飾性に満ちた器は(明治初期の輸出の花形であったjapan kutaniなどまさにそのもの)今でも九谷のそこかしこにしっかりと受け継がれています。
新宿伊勢丹本店、日本一の集客数を誇り時代の先端を走っているこのデパートには、何か夢を託したくなる気分があります。若い作家さんをメインに、バロック的と思うものを依頼して作ってもらっています。どうなるでしょうか・・・。この企画に「九谷塾」の兜蟲や伝々蟲たちが参加してくれることにもなりました。バロックと九谷焼???と、始まった企画でしたが、フィールドを少し広げて漆作家さんや、ガラスの作家さんに加わってもらったら、石川の工芸の魅力を違った角度から見ることができるような気がしてきました。見てのお楽しみ、ということで、機会がったら新宿伊勢丹本店5階に是非来てください。私も多分、会場にいます。


そうして次の週にまでKUTANIが。成り行きでこちらもお引き受けすることになってしまいましたが、お茶の器展です。
時代の移り変わりの中で、今お茶の文化がずいぶん変容してきています。ついこの間まで、会議にはポットとお茶碗が欠かせないものでしたが、今は殆どがペットボトルのお茶と紙コップ。そんな中で、若い女性を中心にお茶の人気が高まっても来ています。様々な種類のお茶の葉、淹れ方の工夫、一緒にいただくお菓子あれこれ、そして器の愉しみ。
私が子供のころの思い出の一番大きなものは、お隣のお祖母ちゃんが呼んでくれるお茶の時間でした。毎日午前と午後、近所の人たちが来ることもあり、お茶のお供は到来物のお菓子だったり、祖母自慢のみつまめだったり、東北ですからお漬物も登場してました。たわいもないおしゃべりとお茶、毎日のお楽しみでした。母も一日に何度もお茶を淹れていました。引揚者でそんなに豊かではなかった生活でしたが、日常の中でお茶の愉しみは存分に味わっていたような気がします。お茶を淹れ終わると、掌で慈しむように急須を撫でていました。日毎に急須を替え、使い終わると磨いていたので、どの急須も艶がありました。母が亡くなって、100個以上あった母の急須たちは、妹と私が半分ずつにして持っています。コーヒーや紅茶、そして中国茶が日常の中に入ってきて、急須の出番が少なくなりました。母の形見の急須たちは棚の中で出番を待っているように並んでいます。
湯呑がコーヒーカップになって、蕎麦猪口がお茶のシ-ンにも登場します。器の愉しみに幅がでてきました。日常の中の贅沢のひとつは、器にあるのではと、私は思っています。思い切りの贅沢をしてみようと、今回のお茶の器はそれぞれの作家さんにこの展示会のためのオリジナルをお願いしました。手作りですからどれもこれもたったひとつのもの。九谷焼と漆器、木工と金工の小物達。加賀の本格的なお茶の道具も見ていただこうと、老舗の茶道具屋さんにも出展いただきました。


東北の大震災から1年半が経ちました。被災地の方の日常はまだまだ厳しいに違いありません。どんな力になってあげられるか心もとないまま、今年も復興支援の思いを込めて「東北の作家たち展」をします。昨年家族ぐるみで加賀を訪れてくださった、宮城県石巻市の亀山英児さん、岩手県遠野市の菊池和好さん、福島県二本松市の庄司人志さん。庄司さんのところはご家族が一人増えました。岩手県藤沢市の本間伸一・文江さん親子、加賀市ゆかりの関口憲孝・好美さん夫婦。ガラスでは仙台市の村山耕二さん、気仙沼市の菊田佳代さん。仙台と青森県弘前市で工房を開いている漆の中村彩子さん。今年は南部鉄瓶の新人高橋大益さんにも加わっていただきました。
今年もおそらく東北から北陸加賀まで来てくださいます。再会が楽しみです。こうやって変わらず長いお付き合いができれば、何かが生まれてくるかもしれません。

この秋、東京新宿で、北陸加賀でお会いしましょう。

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