河島洋・万璃ふたり展 10月10日(金)~19日(日)
2014年10月11日
搬入の時、思わず凄い!!と唸ってしまいました。お二人合わせて106点、渾身の作品群です。長いお付き合いのお二人ですが、作家としての奥の深さを、素晴らしさを再発見しています。
古九谷廃窯後、150年を経て大聖寺の豪商豊田伝右衛門(屋号吉田屋)により開窯された吉田屋窯。伝右衛門の文人的才覚と財力、そして卓抜した技と感性を持った陶工たちによって生み出された名品の数々。洋さんが惹かれた吉田屋の魅力は、古九谷再興に死力を尽くしたが模倣に終始せず、青手古九谷と一味違った黄色を主に背景とし、洒脱で軽快な運筆、優れた透明度の高い色釉、緑・黄・紫・紺青の4彩が見事に融合されていることです。群を抜く絵画性も魅力です。洋さんは十数年前から吉田屋の研究を始め、素地・坏土・色釉の研究を続けてきました。そして吉田屋様式の伝統をふまえ、新たに自分の感性でとらえた「平成の吉田屋」を生み出しています。
河島洋 創吉田屋菖蒲ニ鷺 壺
下書きなしのフリーハンドで描かれる軽やかな線描きに鮮やかなガラス釉、生き生きとした菖蒲と鷺の姿です。
河島洋 創吉田屋朝顔文盃
こうやってアップで見るとまるで大皿です。実際は手のひらに乗る大きさなのですが・・・。
河島洋 創吉田屋加賀黒丸紋手付銚子
漆でいうと深い溜色の美しい銚子です。この生地を作るところからすべて洋さん一人の仕事です。加賀黒という銘名は加賀の海辺から採取した砂鉄から生み出されたものだからです。この艶やかな黒色が出るまで、様々な試行錯誤がありました。
河島万璃 吸坂手泰山木文皿
万璃さんは思索の人、哲学的な作風です。既存の九谷焼のイメージにとらわれず、彼女の意志と技法とで独自の色絵磁器を目指してきました。概念としては、自然の動植物や現象を「翻訳」するというものです。写生のままの描写は「直訳」となり、思索の乏しさとデザイン性に欠けてしまいます。一方で、あまりにデフォルメに偏ると「意訳」となり過ぎて自然の節理を見失うと考えます。・・・目には見えない自然物の魂を、まさにあるかの如くに捉えるなんて、とても難しい作業です。それ故、わくわくできる制作でもあるのです。
河島万璃 色絵糸菊文 壺
万璃さんの生地は全て洋さんが作ります。器の形を見て、何をどのように描くのか、はじめのその作業が万璃さんの作品を決めます。自分の内から湧く感覚を基にして、対象物を解釈し、美しい色絵に具現化できるかどうかを模索するということです。
河島万璃 「星宿」陶額
今回、万璃さんご自身のお薦めは、11点の陶額です。いずれも絵画的要素の高い作品です。昨年加賀市美術館での作陶40年記念展でも人気でした。お客様サービスとして、フリーカップや、ティーカップセットもたくさん用意してくださいました。
陽気で話し好きなご夫妻を囲んで、古九谷論争から昨今の社会問題まで、談笑の輪が広がって、久しぶりに賑やかなギャラリー萩です。
台風19号のニュースもあって、少し心配ですが、秋晴れの続くことを祈りつつ、お出かけくださいますことをお待ちしています。すっかり秋も深まりました。